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「ああもう何も言わない答えない。店員さん、ファミチキみっ……」
「マグロ三つ下さい!」
……ほう。お前にはここが魚屋に見えるのか。
しかしここですかさず俺はパッシブスキル『スルー』を発動。店員さんも同じく発動。
そうして何食わぬ顔でワイポイントカードと五百円玉を店員さんへと手渡す俺。
そんな俺に向かって悔しそうに歯軋りをするニコル。
はっ、ざまぁ。
「………………ファミチキ三つ下さい」
まだまだ俺も子供だね。
そういったニコルを見て優越感に浸ってるんだから。
………………
……。
そんなこんなでファミチキを三つ買わされた俺は、大層な笑顔でファミチキを抱え込む少女を傍目に大きく溜め息を漏らした。
ああ、こうしてまた俺の幸せが逃げていくんだな。
そう俺がすべてに悲観しかけた矢先、
「ユキトさん、ため息なんてつくと幸せが逃げちゃいますよ?」
どの口がその台詞を吐けるんだ。
お前のせいで俺は溜め息を吐く羽目になってるんだろうが。
「俺の昼飯代がたった今消し飛んだところだからな」
「え! もしかしてユキトさんもファミチキ食べたかったんですか!」
「いや、違う。ちゃんと理解してくれ。俺は一言もチキンが食いたいとは言ってないよね。昼飯代の五百円がファミチキに姿を変えたから昼飯を食えなくなったって、そう言いたいんだよ俺は……って、何してんだよお前は」
「ユキトさんがお腹空いているとのことなので、ファミチキを分けて差し上げようと思っているのです」
そう言いながら俺の胸元にファミチキをぐいぐいと押し付けてくる超絶美少女。
まず、人の話を聞け。
そして、そのファミチキは自分で買ったつもりでいるのか。
でもまあ、その優しさだけは評価しようじゃないか。
丁度腹も空いてるしな、ありがたくチキンを頂くと……
「あ!」
俺がチキンを受け取ろうとしたその時、頓狂な黄色い声と共にそいつはまっ逆さまに床に落とされた。
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