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カイトが起きる少し前のこと…………
暗い一室に二つの影があった。
一人は豪華なイスに足を組んで座っており、一人は座っている人の机によりかかるようにして立っていた。暗くて顔がよく分からないが背格好や声からして大人と子供のようだ。
「皇帝、明日_____。」
「そうですか。では私達もあいさつをしておきましょうか。」
皇帝と呼ばれた人が小さく口端を上げて言ったところで、ガチャッと扉が開く音がした。
「呼んだ?」
部屋に入ってきたのは黒いフード付きのローブを着て、フードを深くかぶった少女が入ってきた。
「はい。明日行ってもらいたいところがあるのですが…………。」
皇帝と呼ばれた男は、少女に先程報告されたことと、やってほしいことを伝えた。少女はすぐに応えた。
「いいよ。時間がないからもう行くね?」
と少女は小走りで部屋を出た。残された少年はキッと皇帝をにらんだ。皇帝は気を悪くするわけではなく、やさしく微笑んで言った。
「………………とても大切なんだね。」
「………………当然だね。」
「あの子は強いよ?」
「分かっている。それでも、もし……………。」
「心配性だね……。」
「…………………うるさいよ…………。」
苦笑しながら言われ、だんだん恥ずかしくなってきたのか声を小さくして少年は言った。そんな目の前の十六、七歳くらいの子供に安心させるようにやさしくそれに___とつぶやいた。
「今回は、挨拶だけだから一人でも大丈夫だよ。………さて、次からは君にも頑張ってもらうからしっかり休んでおいで……。」
「分かった。」
そう言うと少年は自室へ戻った。
少年が戻ったあと一人になった皇帝は、ふいに立ち上がり窓の外を見た。
「___________。」
唇がわずかに動いたが、それが声に出されることはなかった。
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