記憶のない騎士

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ざわざわ ざわざわ 「はぁ…………。」 目の前の光景にため息が出る。誰もがそわそわとして落ちつきがない。 一人一人の顔を見ると、不安そうな顔、期待に満ち溢れた顔、自信に満ちた顔、さまざまな顔をしている。俺はそんな奴らをぼんやりと眺めていた。 (気持ちは分からなくもないが、騎士を目指す者としてどうだろうか……。) そんな事を考えながら、先程の光景から目を離し、空を見上げた。流れる雲を眺めていると、この場に聞こえないハズの声が聞こえた。 「おーい!カイト~、緊張してるか~。」 後ろに友人を連れて、にししと笑いながら髪の赤い少女がやってきた。 「…………………後ろの二人は当然として、なんでフェリがいるんだ?」 「いやぁ。昇格してたら、その場でおめでとって言いたくなるじゃん?」 「ならないだろ……。」 「だからっ、ここに来たの!」 「無視かよっ!」 「あはは。フェリは自分に都合が良くないとスルーしたりするからね。」 どんまい!とキースに励まされていると、どうやら今年の昇格者の名前の載った紙がはられたようだ。我先にと人がぞろぞろと近よる。 「……………これでは近づけませんね。」 「だな。」 「そうだね。僕たちは最後あたりに行く?」 キースの提案に乗り、カイトたちはしばらく雑談をすることにした。 「もし、昇格してたらどうするの?」 フェリが楽しそうに聞いてきた。 「あ~、僕は親に連絡かな。」 「私もそうするつもりです。」 「カイトは?…………………ぁッ。」 フェリは言った後にしまったと顔を歪めた。
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