23人が本棚に入れています
本棚に追加
サヤはしばらくのあいだ下を向き、口を閉ざしていたけれど、勢いよく顔を上げるとキラキラした瞳をあたしに向けた。
「ねぇ、ワタシ美紀の恋愛遍歴もっと聞きたいな!すっごい勉強になるもん。 ねぇ、二人も知りたいよね?」
「もちろん!できれば小学生の頃から話してほしいな」
「あたしは男性を落とす仕草を聞きたい!」
サヤが黙った時は言い過ぎたかな?ってかなり焦ったけど、どうやら違ったみたい。
あたしの恋愛遍歴を聞いておったまげるなよ。
あなた達の知らない世界を見せてあげるーー
この後はひたすらあたしの独壇場だった。
小学生の時「付き合ってくれなきゃ死ぬ」と騒いだ男の子がいて、とんだ騒ぎになったこと
中学時代はヤンキーの先輩と付き合っていて、よくバイクの後ろに乗せて貰ったこと
子犬みたいに可愛い顔した後輩に、人前で公開告白されたけど断ってしまい、可哀想な思いをさせたこと
実際はその光景を見ていたオーディエンスの一人に過ぎないのに、まるで自分が体験したかのように、詳しく、都合よく脚色しながら話して聞かせた。
一つのエピソードを語り終える度に、サヤ達が「キャー!」「凄い!映画のワンシーンみたいだね」と騒ぎ、その歓声があたしを更に饒舌にさせたんだ。
最初のコメントを投稿しよう!