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赤羽黒羽(あかはねくろう)は青と分類される色をこよなく嫌っている。
立体映像として天井に写し出されているこの青い空も、町外れに図々しく陣取っている海と呼ばれる人為的な湖の青さも、年々増えてきている青い瞳を持った人々も……
潜在的な部分から赤羽黒羽は青という存在を嫌悪している。自分自身も何故そこまで青を忌避しているのかはわかっていない。
赤羽黒羽自身は好きな物に理由がいらないように、嫌いな物にも理由はいらないと、完結しているが。
そういった意味でも、彼は潜在的な部分から、身体の底の底から青を嫌っているということなのだろう。
そして、何より嫌う青が彼にはある。それは……
「べらんめぇ! 何でおめぇ、全てを無理やり解決しようとしやがんでィ! あそこァじっくりと交渉するとこだろうが!」
「えぇー、でもじっくり交渉してたら人質の女性が可哀想じゃん。ナイフだって突きつけられてたし、さぞ怖い思いをしてたと思うよ、うん。だから、俺は颯爽と助けに入ったわけで……」
何の悪気も無さそうに青い青年、青衣白卯(あおいしろう)は断じた。
その青く澄んだマリンブルーの髪と瞳、青臭い言動と相まって赤羽を一層苛立たせる。
「それに無事救い出せたんだし、結果オーライでしょ。俺のこの『速さ』があれば向かうところ敵なしだよ!」
端から見れば、酷い過信である。
だが、赤羽にはそれが過信ではないことが理解出来た。不本意ながらも彼を評価しているのだから。
「慢心も程々にしとくこった。今はシミュレーションだから万が一失敗しても失うもんはねぇが、現実をあんま甘くみねぇ方がいいぜ?」
赤羽はそれだけ言い残してシミュレーションルームをあとにした。
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