46人が本棚に入れています
本棚に追加
『じゃあ、聞くけど
好きって何?』
唐突な味気のないメール…
でも、
軽く衝撃を受けた。
じっと、液晶を見つめる。
ー好き…、か。
頭の中で当てはまりそうな、
彼が納得するような答えを模索する。
好き好き好き好き…
ふっと、昔の記憶が甦ってきた。
たくさんキュンとし、
たくさん泣いた。
王道な恋愛…
そんな恋。
その人のことはまともに好きだったんではないかと思う。
でも、今思うと
それは虚構だったのかもしれない。
彼をひとめ見るだけで胸が高鳴って、
彼と目があった気がしただけで
その日一日幸せ。
そんな皆が感じるであろう感情を
持ったことがあるし、
それは甘くて純粋で…
…素敵なことだった。
本当にそう思う。
けど…
…だけど…
それは結局恋に恋してる
自分が好きなだけで、
私が好きな彼が好きなだけで、…
好きと思うこと
その心地が美味しくて、
それをただむさぼっている
そんな虚しいものだと
いつからか感じるようになった。
いつからか好きがわからなくなった。
ー好き…ねぇ。…
もう一度心の中で呟く。
なんと返そうか…
指先を滑らせ、なんとか答えを紡ぎだした。
『その人のことが頭から離れなくなることじゃない?』
ありきたりな言葉、どっかの少女漫画にでも出てきそう
送信ボタンを押す。
□送信画面□
返事が来るのを…待ってみる。
この一通のメールで、
コイツ…
尾澤海誠ーオザワ カイセイ
に対する私の感情はガラッと変わってしまった。
最初はー
ただ、暗くて、
うつむき加減で、
…何となく近寄りがたい。
そんな印象しか持っていなかった。
好きというよりはむしろ嫌いだった。
特にじとっとした目が
光がなくて嫌だった。
…そんな、最悪の第一印象の相手と
なぜこんなメールをしているのか
きっかけは、本当に些細なことだった。
最初のコメントを投稿しよう!