始まりは唐突に

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思わず溜め息が零れる。しかし、やることも無いので、ひたすら窓の外を眺めておく。 すると、春が私のすぐそばまでやってくる。 名前を呼ばれて振り返ると、彼女は驚愕を顔に浮かべていた。ちなみに、私の名前は真心絆(まごころきずな)だ。 「どうしたの?」 「あれ…、」 「あれ?」 彼女が指を指す方向をずっと目で辿ってみると、私も彼女と同じように驚いてそのまま固まってしまう。 今日は何かの行事でもあるのだろうか。 いや、そんな事は聞いていない。 「何なんこれ…。」 そう、まさに理解し難い状況が、そこにはあったのだ。 たくさんの足音が、ここまでも聞こえてくる。 たくさんの列を作り、ゾロゾロとこちらに歩いてくるのは、制服を着こなした人々。 その制服は、全て同じというわけではなく、いくつか種類があり、その事から、いくつもの学校の生徒が居るのがわかる。 それも、私達と同じ中学生や、小学生、高校生、大学生…と、見たところ、いろんな年齢の学生が、この学校に集結しつつある。 彼らはキョロキョロとこの学校を見渡したり、隣の人と話たりと、いろいろな反応をしている。 グランドに整列していく姿を、私と春は、唖然として眺めるしかなかったのだが、不意に、隣から大声がした。 「な…なんやあれーっ!!」 「お…おい、今日何かあるんか?ないやんな?」 クラスメートも起きている事態に気づいたようだ。一気に騒ぎが大きくなる。 落ち着きなく窓際に集まり、みんなはざわざわと騒ぎ立てる。 列は門を次々とくぐり抜け、その勢いが止まることはなく、グランドに整列する人数が、瞬く間に増えていく。 “有り得ない”と誰かが呟いたのが、私には聞こえた。 これから何が起きるのかなんて、私…いや、私たちには知る術もなかった。
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