序章

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むかし、むかし。 そう、世界が出来てまもない頃。 ひとつの帝国と国・ふたつの王国のある五大陸が、五人の女神によって造られたのは、有名なおとぎ話。 光が闇を照らし、水の上に大地をのせ、大地に火の活力を注ぎ込み、そして命が誕生した。 そして、この世界の<創造者>によって遣わされた、五人の女神がいた。 ひとりは、光を司る女神。その姿は闇夜を照らす光のごとく凜としており、そして人の真偽を見極める目を持っていたという。彼女は現在<騎士の国>と呼ばれる<ガヴァリエーレ国>を創造した。 ひとりは、大地を司る女神。その姿は、全ての母のごとし。そして、術の根源をも創造した。彼女は現在<魔術師の国>と呼ばれる<アンティキタ王国>を創造した。 ひとりは、火を司る女神。その姿は、内に秘める炎のような強い心を美しい微笑みで隠し、そして、人間という生き物を何よりも愛したそうな。彼女は現在<麗炎の国>と呼ばれる<ネウトゥラーレ王国>を創造した。 ひとりは、風を司る女神。その姿は、風に舞う花弁のように儚く、そして本質を見極める、翡翠色の瞳を持っていたそうな。彼女は現在<四季の国>と呼ばれる<インスラリタ皇国>を創造した。 ひとりは、水を司る女神。その姿は流れる水のごとく清らかで、気高かったそうな。そして五人の女神の中でも、<創造者>に近い存在であったそうだ。彼女は、現在<水幻の国>と呼ばれる<ミリタリズム帝国>を創造した。 そうして、人々が文明を築き、世界はみるみる成長していく。しかしあるとき、ミリタリズム帝国・ガヴァリエーレ国・アンティキタ王国・インスラリタ皇国の、この四つの国々が富を求めて争いあい、世界は急激に衰退していった。 この四大国の争いは100年にも及び、女神たちは酷く哀しんだ。そして女神は人々の前から、消えた。 この戦争が101年目に差しかかろうとした時、血に染まり痛めつけられた世界は、とうとう悲鳴を上げ、ぼろぼろと崩れていった。 こうしてようやく、四つの大陸は戦いを止め、中立であったネウトゥラーレ王国を中心に、協力するようになった。 必死に祈り、互いに手を取り合う人々を見て、五人の女神は世界ごと、やり直すチャンスを与えたそうな。 女神にチャンスをもらった人々は国同士のいざこざを消化し、世界は急激に成長した。 それが、今の〈この世界〉。
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