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うだうだしている彼女―<ミネルヴァ・カークランド>の頭上から、不意に声が降ってきた。
ミネルヴァが振り返ると、いつも二段ベッドの上で眠っている、金髪碧眼の青年と目が合った。
「…おはよう、ラルフ」
彼―<ラルフ・アーノルド>は、ミネルヴァの同僚で、ルームメート、そして何故か星の重力に逆らって揺れるアホ毛が特徴の青年だ。
「はい、おはようございます」
にこ、と微笑む。
ミネルヴァはふっと軽く息を吐き、愛用している縁のない眼鏡をかけた。
そのまま立ち上がると、ぐっと大きく伸びをし、あくびを噛み殺しながら自分と一緒に落ちたシーツを拾ってベッドを直した。
すると突然、ラルフのいる二段ベッドの上―ミネルヴァが下の一階で二階がラルフになっている―からガタッと音がし、何事かと思いミネルヴァはゆっくりと頭を上げた。
ラルフは赤面で、目を合わせようとしない。
「…なんだ?」
「ま、またそんな格好をして!!いくら同じ軍人だとしても、オレは男であって……。その、女性なんですから、もっと女性らしく…」
あわてふためくラルフに息をつき、自分の格好を改めて見返す。
黒のタンクトップに、長ズボン。
まあ確かに、女性がするにはラフすぎる。
「おい、知ってるか。そういう
のをな、何処かじゃ<ジェンダー>って言うらしいぞ」
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