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ミネルヴァは顔を上げると光の灯らない瞳に彼を捉え、びしっと言い放った。
するとラルフはぽかんとし、頭の上のアホ毛とともに首を傾げた。
「何ですか、それ?」
「よーし、気にしたら負けだぞ」
さらに首を傾げるラルフにミネルヴァは「気にするな」と言って、そそくさと着替え始め、髪をうなじのあたりで縛り、軍で配給される剣を腰に差して、ひとつ、大きな欠伸をした。
「あれ、今日は休みでは?」
再び眠りに入ろうとしたラルフが首を持ち上げ、軍服に着替えたミネルヴァを見る。
「ん。大佐に呼ばれてんだよ。こっちは眠ぃっつーのに…」
もうひとつ欠伸をすると、縁の無い眼鏡をかけ直し、ドアノブに手をかけた。
いってらっしゃい、と眠そうなラルフの声に背中を押され、ミネルヴァは部屋を出た。
やはり今日は休日だ。
誰もいない。
だが、ふと遠くに聞こえた小さな声に、休日でも真面目に剣術の訓練に明け暮れている者が居るんだと知り、ミネルヴァはそのやる気の無さそうな半開きの目をごしごしと擦った。
(…眠い………)
まだ朝も早く、恐らく太陽はまだ登り始めだろう。
ミネルヴァは、早朝の休日で誰もいない廊下を足音を響かせながら、<大佐>がいる部屋を目指して歩き出した。
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