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「…っと、お風呂どうぞ。バスタオルと体洗う用のタオル、ここ置いときますね。じゃ、私はこれで…」
『戻りますね。』
と言おうとした瞬間――
「あ!!…えっと…タメで、お願いします。そのっ…俺っ、ずっと男子校でバスケばっかやってて、…その、女子としゃべる機会ってあんまなくて…どういう風にしゃべったらえぇんか分からんくて…やから、その……」
そしてしばらく沈黙が続いた。
クスッ
その素直さがおかしくて、私は思わず笑ってしまった。
「なんや、嫌われてるんか思った(笑)」
「え!?いや、嫌ってなんか…。むしろ、…や、なんもない!」
何か言おうとしたので少し待ってみたが、言いそうにないので違う話を振ってみた。
「あの、一応兄弟になったわけなんやし…何て呼べばいい?」
すると淳は何のことか分からない、という顔で
「え?」
と目で聞いてきた。
「その…、名前…」
私がそう言って初めて理解したようだ。
そして淳はしばらく考えていた。
そして口を開いた。
「なんでもいいよ?君の思うので。俺は何て呼べばいい?」
「ウチも。淳クンの思うのでえぇで。」
と、ここまでしゃべってみてやっと淳は気付いたようだ。
「って…へ!?あれ!?関西弁!?なんで!?キミ、関西人なん!?」
あー やっぱりそっか。
「ううん。」
と、私は首を左右に振って答えた。
淳は、
「え!?」
と、声をあげ
「じゃあなんで関西弁!?」
と言った。
「いや、淳クンが話してるの聞いてたら、若干関西弁混じってたし…?もしかしたらそうかな、って。正解??」
と私が意地の悪い笑みを浮かべながら言うと、淳は降参という風に両手を挙げて苦笑した。
「すごいな。分からないと思ったのに。」
…そして一瞬悲しげな目をすると、小さな体を洗う用のタオルを片手に、
「じゃ、風呂お先に。」
と言って頭を軽く下げた。
私はあわてて洗面所を後にした。
リビングに戻った私は、パパに
「ずいぶん遅かったな。何かあったのかい?」
と言われたけど、
「ううん、何でもない。それより、夕飯の残り作ってしまうね。」
と言い残してキッチンに向かった。
そして、さっき手を止めてしまって残してしまっていた作業を再開した。
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