第一話

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しばらくすると、母が買い物袋を両手に下げて帰ってきた。 「あら恭平くん、サッカーどうなった?」 「2対2で引き分けて延長戦で浦和がVゴール勝ちっすよ! お母さん今日のご飯は?」 「キョン、帰んないの」 「今日は恭平くんの好きなコーンポタージュ風シチューよ♪」 母とキョンは仲良しだ。 キョンに母親はいない。 キョンが七歳の時に突然の病で倒れ、その日のうちに亡くなった。 母が台所で野菜を刻み始めた。 きょはその音を聞いているのが好きらしい。ダイニングからじっと石のように動かない。 ふいにキョンが口を開く。 「かほ」 「何よ」 「さっき言った事だけど」 「さっき言った事って?」 「ジョーダンだよ」 「さっきっていつのさっき」 「もういいよ」 「………」 あたしは2階の自分の部屋に閉じこもった。
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