第一話

9/9
前へ
/26ページ
次へ
1階へ降りて行くと、ちょうど父が帰ってきた。 「おかえりなさいパパ」 「ただいま。恭平くんただいま~」 「おかえり!おじさん」 キョンはあたしの父の事は『おじさん』と呼ぶ。母の事は『お母さん』と呼ぶのに。 「お、ミミも帰ってきたのか、ん?」 父が猫のミミを抱き上げようとする。 でもミミは父よりキョンが好きみたいで、父の手をヒラリとかわすとキョンの膝の上という、もはや定位置に飛び乗った。 「ミミ~父さんにもなついて欲しいなぁ」 キョンはミミを抱き上げ、父の方を向かせる。 「お前のご主人様はこの人だぞぉ」 キョンがそう言ってミミの顔をのぞきこむと、ミミは気だるそうに「ニャァ」と鳴いた。 母が笑った。 父も笑ってキョンも笑う。 つられてあたしも笑う。 父、母、あたし、キョン。それから猫のミミ。この四人と一匹での食事。 いつもこんな風に、我が家は平和だ。
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加