プロローグ

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「こら!!」 突然耳元で爆発が起きたのかと思うほどの大声で叫ばれて 足がすくんで思わず悲鳴をあげそうになった。 「な なんだよ …」 犠牲になった方の右耳を押さえて 涙目なった目を爆発が起きた方に向けた。 「なんだよ… じゃないわよ!門限はどうした!?門限は!!」 手に持ったホウキを鞭のごとく土が散らかったままの床を叩く。 土埃が宙を舞う。 爆発かと思った声は 掃き掃除をしていた蒼空の姉、聖空(せら)の口から放たれたものだった。 「別にいいでしょ 僕だって遊んでるわけじゃないの」 そう 決して遊んでいるわけではなかった。 空を眺める大事な仕事をこなしていたのだ。 「よくない!」 子供が駄駄を捏ねるように足でバタバタと床を踏む。 聖空は蒼空の6つ年上、20歳で いまは母さんの元でバイトとして働いている。 「母さん!母さんも母さんだよ~?」 眉をひそめて言う。 「いいじゃん 蒼空がよければ♪」 対する母さんは何とも適当に返す。 嬉しいようで嬉しくない。そんな気持ち。 「………ぅぅぅ」 聖空は撃沈したかのようにガックリと肩を落として唸っている。 諦めたのか と思ったが、 「と、とにかく!!門限は何時でしょうか!?はい!!答えなさい!!」 蒼空の目の前にホウキをかざす。 床を掃いたホウキを人に向けるなんて と心のなかで呟き、 「だから 母さんも言ってるじゃん 僕がよければ って」 蒼空は自分に向けられたホウキを手の甲で退かすと聖空の脇を通り階段へ向かおうとしたが―― 聖空が前に立ちはだかり 「門限は何時だ!!いっつもそうやって、今日は退かないんだから!!」 今日はやけにしつこい。 「えっと6時半」 しかたない と思い、蒼空は真面目に答えてやる。 「そう!!そして今は何時でしょうか!!はい!!答える!!」 また聖空はホウキを蒼空に向ける。 「え…7時42分です… すいませんでした」 蒼空はまたも真面目に答えてやる こうなったらとりあえず謝る。 聖空の説教はこうなると恐ろしく長い。というのは以前、蒼空も経験していた あの適当な母さんから産まれて なぜこんな説教好きな子供が出来るのか 人間は不思議なものだ。 すると 「い 以後気を付けるように!!」 まさか蒼空がこのタイミングで謝るとは思っていなかったのか 若干目を丸くしている。 そして …笑う。 その聖空の笑顔は呼吸を忘れるほど綺麗なもので、いつも鏡の前で笑顔の練習をしてもここまでにはならないだろう。 image=465692467.jpg
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