プロローグ

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蒼空は聖空の説教癖は鬱陶しいが その笑顔は一番好きだった。 蒼空もつられて笑う。 それは説教が長時間にならずに終わって安心から来た安堵の笑顔、としておく。 微かに顔が熱いは気のせいだろう。 「分かればよろしいっ」 聖空は笑顔のままそう言って蒼空の金髪の頭をわしゃわしゃと撫でた。 蒼空は直立しても聖空の肩ほどの身長で、あまり背は高くない。 にんまりとした笑顔を蒼空に見せた後、くるっと背を向けて 機嫌よく掃除に戻った。 蒼空は乱れた髪のまま 母さんの方を見る。 母さんはまるで蒼空と聖空のやりとりをずっと見ていたかのように 大きな植木鉢を両手でもちながら「うんうん」と頷いている。 (はあ………) 蒼空は小さくため息をつき、 ご機嫌となって鼻歌を歌いながら掃き掃除をしている聖空の横を抜け2階に上がるための階段へ向かい、 階段の踏み板に足をのせようとしたその時 ―――ガシャン 静かになった店内の沈黙を破って なにかが割れる音がした。 蒼空は反射的に後ろを振り向くと 母さんが抱えていた植木鉢は床に落ち 割れていた。 「母さんっ大丈夫!?」 蒼空が言う前に聖空がホウキと塵取りを持ったままそう言って駆けつける。 だが 母さんは聖空の言葉には反応せず、 慌てた様子で勢いよく半開きのシャッターをくぐって外へ飛び出した。 聖空は 戸惑ったように割れた植木鉢とシャッターの向こう側の母さんを何度も見た後 ホウキと塵取りをその場に置き 後を追うように シャッターをくぐり外へ出る。 蒼空も訳がわからないまま聖空と同じく 戸惑いながらも外へ―― image=465699171.jpg
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