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凄まじい轟音が空気を揺らし、その衝撃により人の居ない民家が次々と消し去る。
地面のアスファルト、コンクリートは波を打ち、砕け、宙に舞う。
迫り来る破壊の波より遥かに速い衝撃波が蒼空達を呑む。
身体の内側からバラバラになりそうな痛みが走る。
衝撃波蒼空達を通過しは背後の建物、地面、空気を破壊していく。
身体が砕けないのが不思議なくらいだ。
「聖空!!!!蒼空!!!!」
母さんが怒鳴る。
だが破壊し続けるその轟音に掻き消され あまりよく聞こえない。
直後
蒼空は天地がわからなくなっていた。ぐるぐると なんだか気持ち悪い。そして気がついたときには 見慣れた天井を見上げていた。店の天井だ。そして全身に遅れてに痛みが走る。
思わずうめく。
さっきまで店の外に聖空と母さんと出ていたのに と思ったが どうやら吹っ飛ばされたようだ。母さんに。
思えば一瞬、蒼空の視界から母さんが消えて襟を掴まれた感覚を覚えている様な気がする。
気づけば隣に聖空が今起き上がるところだった。聖空も母さんに投げられたのだろうか?
あんな細い腕で二人を投げる?あり得ない。
と
「聖空!聖空ならわかるよね!?自分がやるべきこと!守るべきもの!今……今なんだよ!必ず…!!」
轟音を掻き消すように母さんの声が店内に響き渡る。
そして母さんは勢いよくシャッターを閉めた。
店内が暗闇に包まれる。
(え?…………)
蒼空は言葉が出なかった。
母さんはまだ外にいる。いや 自ら外に残った。
あの破壊の波に飲まれれば… いや 民家が吹き飛んだほどだ。ここだって吹き飛ぶ。
「母さ…」
隣で聖空の声が聞こえた。
少し安心した。 なぜか一人じゃないって思えた自分がいた。どうせ死ぬのなら と思った時―――
シャッターをいとも容易く布のように切り裂き赤い炎のような光が暗闇を裂いた。
それは雲の切れ目から太陽の光が射すような そんな錯覚を覚える。
その光は鋭い刃となって 蒼空達の身体を容赦なく射す。
不思議と熱くない。
熱いと言うより 痛い。
鋭い針が無数に生えた壁を全身に何回も押し付けられているかのような そんな痛み。
切り裂かれたシャッターは赤い光の風圧により もはやよく切れないナイフのようになり 容赦なく蒼空 聖空の方へ飛んでいく。
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