欠けた月

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まあ、こんなふうに。 私の母は世間一般の優しく強い母ではない。 小学校高学年のころあたりだっただろうか。 近所の友達のお母さんや物語の中での母親像。 それが、我が家とは大きく異なっているということがはっきり分かってきた。 まず、普通、母親は子供の前でヒステリックに泣きわめくことはないらしい。 普通、母親は自分が死んだ後、どうやって生きて行くか子供に教えたりはしないらしい。 普通、母親は自殺願望を子供の前で口にしないらしい。 普通、母親は家族の前で刃物を振り回したり、悲鳴をあげたりしないらしい。 普通、母親は自殺未遂を繰り返さないらしい。 そんな母親は驚くくらい優しい絵に描いたような母親なときもあった。 薄々気付いてた。 ああ、ママは普通じゃないんだー…って。 でも。それが私の母だったし、私は母を愛してるしそれでいいとおもってた。 そう思ってた。 私は「いい子」だったから。 あくまでも「いい子」だったから。
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