欠けた月

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小学校のときは、95点以下のテストなんて知らなかった。 基本100点。運動もそこそこ。足が速いのが自慢だった。 何か良いことをすればママが喜んでくれる。褒めてくれる。 「美月は私の生き甲斐よ、自慢の娘。」 その一心でなんでも頑張った。 絵に描いたようないい子。 優等生。 それが私でなきゃいけない気がした。 中3のはじめまでは。 何かきっかけがあったわけではない。 あるとき、その張りつめていた気持ちがぷつっと、きれた。 ふと、長い間かかってきた催眠状態から覚めたような。 知らぬ間に夜が明けていた、みたいな。 そんな感覚。 ある日突然、私は何もかもできなくなった。 母の言うことに従う自分。 母に応えることで生きている自分。 怒られないよう生きる自分。 間違わないよう生きる自分。 ーーーあたしはどうしたいの? ーーーわからない。わからないよ。 自分のではなにもできないことに気付いただけのことだった。 そして自分には微塵も自信が無いことに気付いただけのことだった。 私は母で出来ているーーー。
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