第一章 破壊された月

2/2
前へ
/9ページ
次へ
「あーったく、なんでこんなに暑いんだよー。」 7月中旬。 俺、酒井龍太郎(さかいりょうたろう)は炎天下のアスファルトの坂道を登っていた。 「期末終わって早く帰れるとか思ってたのに、暑さに加えてなんで家に帰るまでにこんな急勾配を....はぁ。あっちぃ。」 ちなみにこれは独り言である。 当然360度周囲には誰もいない。 田舎で育ったせいか、家族全員お喋りなせいかわからないが、俺はいつからか無駄にでかい独り言が多い....らしい。 高校生になって最初の夏休みが目前! 海行って女の子の水着姿を拝もうぜ! 女子誘って山にキャンプいかないか! やっぱ夏といえば祭りだろ! とさっきまで騒いでいたのだが、友達はみんな期末後は部活。 結局帰宅部の俺は友達を何時間も待つのは馬鹿らしくなり帰ることにしたのだ。 だが、帰る時間を間違えた。 時間は午後2時。最も暑い時間帯である。 そんなときに炎天下のアスファルト急勾配に挑むハメに。 しかもこの坂は地元の心臓破りの坂とも呼ばれているのだ。 まぁ、この坂を登りきらなきゃ家に着かないのだから仕方ないのだが....。 「ったく、お天道様はほんと意地悪いよなぁー。」 そんな愚痴をこぼしながら俺が汗を首にかけていたタオルで拭った時だった。 「お天道様に文句を言ったってしょうがないじゃない。この時間にこんな心臓破りの坂歩いているあんたが馬鹿なのよ。」 突如、俺の背後から、馬鹿にした声が聞こえてきた。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加