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目覚めた時、すべての出来事に戸惑った。
春の柔らかな日差しに目を細め声の方へと視線を動かした。
最初に耳に付いたのは、泣き叫ぶ赤ん坊の声。うるさくて、うるさくて……しかし、この場面に前も遭遇している事にハッと気付く。
寝台の上で横たわっているのは……あの時離れた大事な主人。
「…………リナリア?」
そんなバカな。
俺はあの時すべてを捨てる代わりに、リナリアを助けて欲しいと願った……ベビーロマンティカに。
あの少年のような不思議な存在は影と呼ばれる我々の長にあたる。リナリア達、主人には言えない事もある……それが影とロマンティカの特殊な関係。
「やってくれたなロマンティカめ……ただの暇つぶしだろうが……うん?まさか俺の主人はリナリアでは無くて、あの泣いてる小僧か?」
ロマンティカに悪態をつきながらも、リナリアに会えた嬉しさに顔がにやけるのは止められない。
俺の主人が、あの泣いている小僧でもな。
寝台を囲みスノウとファレ、それに甲斐甲斐しく動き回るシアラの姿が見える。だが肝心の、あいつが居ない。
たんに部屋の中に入れて貰えないだけか?……それとも、あの時のように、またスカイがリナリアに何かしてるのか?
不安が胸に過ぎる。
……ん?何だ……リナリアの様子が……。
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