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『僕は何故自分が生きているのかわからない。
生まれた理由も、いつ生まれたのかすらもわからない。
父と母ははじめからいなかったし、そういうものだと思っていた。
そもそも自分は生きているのか僕は知らない。
ただ1つだけ覚えているのは遠い遠い記憶。
僕が確かに「生まれた」という意識の中、灰色猫が黄色の目玉で僕を見据え、嗄れ声で「この子は、人を殺すねぇ」とはっきりと言ったということ。
まだ目も開いていないはずなのに、何故覚えているのか。
そしてその後僕はどうやって育ったのか。
ただ例の猫は家の片隅にずっといる。
じっと下を向いて居眠りをしている。
僕は餌をやっているが、それに手を付けられた気配はない。
夜中外へ出ているような感じもないので、死んでいるのかも知れない。
しかし、触れてみると温かいので僕は餌をやっている。
それだけだ。』
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