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「明日から参加しなくていいからな。清志がいると面白くないよ」
「今度からケンちゃんが鬼やってよ。高いところも暗いところも平気で来るから、隠れ甲斐があるわ」
女の子がそう言った。
清志の中の恐怖心と、男としてのプライドが葛藤していた。しかしどうしても越えられない何かが、清志を仲間から引き離していたのである。
そしてまた今日も、涙しながら帰宅することになった。
あれから数日、恒例のかくれんぼに参加しなかった清志に、久しぶりの声がかかった。
「そろそろ度胸はついたか。やっぱり大勢いたほうが楽しいんだ。それに、清志みたいな弱い奴がいないと、面白くないよ。今日から清志も参加しろよ」
やっと仲間に入れてもらえる嬉しさの反面、また鬼になったら、という恐怖感が清志の体を身震いさせた。
「――ジャンケン、ポン!」
祈る思いで手を出した。
「珍しく勝ったな。かなり練習してきたんだろ」
「今日の鬼はケンちゃんね。木の上や草むらは隠れちゃダメよ。ケンちゃん、どこでも見つけるんだから」
清志が鬼じゃないことで、この場はよりいっそう盛り上がっていた。
「だったら、あそこしかないよな」
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