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「あんなとこだめよ。弱虫じゃない私たちだって入れないんだから」
まだ誰も入ったことがない洞窟が林の奥にあった。人が死んだとか、幽霊が出るとか、学校の七不思議にもなっている場所だ。今まで誰も入ったこことがない。
「お前、あそこしか隠れる所ないぞ。他の場所だったら全部俺が見つけてやるからな。――さあ、行くぞ!」
その掛け声と共に、みんな一斉に散らばって行った。
それでもやはり木に登る人、側溝の中に入っていく人。繁茂している藪の中に、無理やり体を押し込んでいく人、様々だ。
清志は、四、五人のグループと一緒に、やっとの思いで林の奥まで来ることができた。
目の前に、洞窟の小さな入り口がポッカリと開いている。日の当たらないその場所は、雑草が生い茂り、乱雑に積まれた石には、苔が蒼くこびりついて、何ともいえない不気味さが漂っていた。
「だ、誰か先に入れよ……」
「あんたが先に入ってよ。大きな体してるんだから」
自分から入ることは、誰にもできない。むしろ、誰かが入るところを見たいという思いしかなかった。
「清志、お前が先に入れよ。今までかくれんぼの練習してたんだろ。度胸試しにいいじゃないか」
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