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みんなが清志を見ている。
「だ、だめだよ。やっぱり度胸ないよ、僕……」
「なんだ、やっぱり弱虫じゃないか。みんな、清志はほっといて違うところに行こうぜ」
そう言って、清志を残してみんなが歩き始めた。
静かになったその場所に流れる空気が、ひんやりと冷たくなって清志の体を包み込んだ。
気になる洞窟の中からは、何やら怪しげな音が聞こえるような気がする。清志の足がすくみ始めた。
ふと我に返って、辺りを見回すと、今までいた仲間たちはもうどこにも見当たらない。
そろそろ鬼が見つけに来るころだ。清志は慌てて隠れるところを探したが、無数の樹木と生い茂った草むらがあるだけだ。みんながどこに行ったのか、清志には全く分からなかった。
「さあ、行くぞ! ちゃんと隠れたか。すぐに見つけてやるからな!」
遠くから、僕らを探す鬼の声が聞こえた。
まだ隠れていないのは、たぶん清志だけだ。そして、鬼の声がだんだんと近づいてくる。
前に進むことができず、少し後ろに下がった所で、湿った石に足をとられて転んでしまった。ちょうどそこは、洞窟の入り口だ。
何かが聞こえた。人の声のようにも聞こえる。
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