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目の前に、あまり見かけない女の子が立っている。そして優しく微笑みながら手招きしていた。まだ林の中の真ん中ほどだ。
「とてもいい場所があるの。あたしが教えてあげる。少し怖いけど我慢してね。絶対に見つかんないから」
「ちょ、ちょっと待って。君……誰?」
清志の問いには答えないまま、その子は走り出していた。慌てて追いかけたが、慣れた場所なのか、清志はなかなか追いつけない。
そしてやっとの思いでたどり着いたのは、あの洞窟の入り口だった。
「ここよ、ここなら絶対に見つからないわ。怖くて誰も入って来れないと思うし、一番最後に自分から出て行けば、あなたはきっとヒーローになるはずよ」
ハアハア息を切らしながら、女の子が言った。
「でも僕、入れないよ。何が出てくるか分からないだろ。君は入ったことあるの?」
「あたしもまだよ。だから入ってみたいの。二人で行けば怖くないでしょ。勇気を出して入ってみましょうよ」
女の子の笑顔が輝いている。
「でもこの前、幽霊の声を聞いたんだ。女の声で、こっちにおいでよ、って……」
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