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(二)
三年前に改築されたばかりだというのに、手入れの行き届いた庭園に面したその旅館の和室は、近代建築の気配すら感じさせない古めかしさがあった。
日本人の情緒を守りたい。古きよき姿を壊してはいけない。そんな女将の精神が如実に表れた結果、創業当時を再現したかのような純和風旅館に生まれ変わっていたのである。
そして、林立する高層ホテル郡を尻目に、早くから予約しておかないと宿泊できないという名物旅館となっていた。
ダメだと思いながら、前日だというのに、俊子は予約の電話を入れてみた。もちろん満室ということで断られたのだが、
「以前お世話になった田川ですが……」
と言ってみた。そしてお世話になった事情を説明する。
するとしばらく待たされてから、
「どうぞおいで下さい」
と、快い返事を頂くことになったのである。
ホテルではなく、こんな旅館を選んだのは、日本古来の温泉を楽しみたい、という希望があったからだった。
「――しかし珍しいね。ディズニーランドに行きたい、とでも言うのかと思ってたよ」
と、浴衣姿の江島邦雄が言った。「まさか九州まで来るとは思わなかった」
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