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  まんまるな月明かりが   差し込んでくる部屋の中。   何人もの溜め息が一気に   俺へと向けられる。   ああ…   居心地が悪い。  「なんでお前は   いつもそうなんだっ!」  「わざとじゃねーよっ!」  「…ったく   この出来損ないっ。」  「………っ/」   確かに俺は自分の役割さえ   ろくに果たす事の出来ない   出来損ないだけど   実の父親に   言われてしまえば   さすがに、かなり堪える。   この家は昔から有名な血族   で一族で…   数多の兄弟達も、その名を   汚してしまわないようにと   それなりに名誉ある功績を   残しているらしく   未だに誰一人、人間を   呪い殺した事がないのは   末っ子である俺だけで   前代未聞なんだってさ。  「なれるなら、俺も立派な   ゲンガーになりたいよ!」   それで   父ちゃんにも母ちゃんにも   兄ちゃん達にも…   みんなにも認めて貰いたい   俺自身を認めて   受け入れて貰いたい…。   そんな俺の言葉には   耳を傾ける素振りもなく   父ちゃんは   顔をしかめてしまうから   目頭がジワッと熱くなった  「はぁ…。」   ぼやけた視界に   伸びてきた手は優しく…   でも、性格が出ているのか   わしゃわしゃっと大雑把に   俺の頭を撫でる。  「そうお堅くなんなよ。」  「兄ちゃ…っ、」  「光は黙っていなさい。」  「そりゃあ、無理だな。」   なんてニッと笑い   まるで俺を庇うように   出てきたのは   一番年上の兄ちゃん。   小さく口を開き   大丈夫、と俺に呟けば   また負け知らずの   堂々とした口調で喋り出す  「大貴は、まだ人間を殺せて   ねぇー出来損ないなのかも   しれねぇーけど   それを立派に育ててやんの   が親の役目だろうがっ。」  「だ、誰に向かって   そんな口を聞いているっ!」  「つーか、そんな出来損ない   を育てられねぇー親も親で   出来損ないだよな。   …なあ、父さんっ?」  「光‥、お前は…ッ」   悔しそうに眉を潜めて   父ちゃんは言葉を失う。 ー
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