2、良い話

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私は一週間程、日を置いて、体調の良い日に、また永田さんの居るバーへと仕事帰りに寄った。 「こんばんは」 「いらっしゃい」 私の顔を見て、すぐさまカクテルの準備をする永田さん。 店の店主だろうか、黒スーツの男性が私の側に来て、ポツリ小声で言った。 「お客様。しばらく、いらっしゃらなかったから、彼はとても心配していましたよ」 「えっ、そうなんですか?」 「だから、ほら。彼、背を向けてるでしょ?実はあれ、照れ隠し」 黒スーツの男性は、そう言って裏へと去って行っ た。 「まったく、何を植え付けてんのか」 永田さんは、呆れた口調で言っていた。 聞こえていたんだ。 「仕事でシステムが変わる事になって、また一から覚えなきゃならくなって。帰りも遅くなって、 お店に寄れませんでした。すいません、心配かけさせてしまって」 「やだな、謝らない下さいよ。益々僕がキマズイじゃないですか」 私は、そんな可愛いハニカミ笑顔に思わず腹を抱えて笑った。 「こら、笑い過ぎですよ」 「あはは(笑)、すいません」 「今夜も気分良さそうですね?」 「はい、あれから大嫌いな女に嫌われたおかげで、無理な付き合いもしなくて済むようになりましたし、ストレスも解消されたので。今はとても楽しく仕事が出来ています」 「じゃあ、これでやっと嫌な事を忘れられた訳ですね」 「要するに、そういう事です」 私達は、また顔を見合せて笑い合った。 「じゃあ、今夜は酔って是非とも気持ち良くなって帰って頂きたいので、僕の本当のキスのあじでも、ご馳走しますよ」 「はい、ありがとうございます!」
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