2、良い話

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まさか、こんな事になるだなんて。 私は赤面状態から、少しずつ頭がガンガンしてきて、朦朧としていた。 しばらくして私の背中に上着を被せて、声が聞こえた。 「立てれる?」 「はい」 肩に触れる温かくて大きな手に、私は支えられて、店の前に横付けされた車に乗り込んだ。 何だかグッタリしちゃって、余り視界が広く見渡せない。 「家はどの辺り?」 「この道を角まで突き当たり、左に曲がったとこのコンビニの近く…」 「あぁ、あそこね」 永田さんの声。 私はやっぱり、送って貰ってるんだ。 目を閉じて、感じていた。 この人の隣に居る事を。 鼻をすする音、咳払い、それから服がすれる音、それから…。 私は、ほんの一瞬だけあまりの心地良さに眠ってしまった。 ハッ…! 車のエンジン音。 明らかにどこかで停車しているような。 コンビニのネオンが見えた。 うちの近くのコンビニの駐車場? 「目、覚めた?いいよ、まだもう少し目を閉じていても。ちゃんと送ってあげるから」 「うん…。あの、ごめんなさい。私、迷惑掛けちゃったよね。お仕事まだ途中だったのに」 「いいって、気にしなくても。それより、顔まだ赤いね。本当にお酒飲めない子なんだね。無理に薦めて、悪かった」 呟くような。 囁くような。 深くて、低くて、重くて、けど優しくて、温かくて、溶けてしまうくらいの甘い声に、私は完全に気持ち良くなってしまっていた。 私の中途半端に着ている上着を、しっかりと包み込んでくれた永田さんの手に、私は思わず頬を寄せた。 「あなたは本当に優しい人です」 いつかの、優しさを掲げて人から好かれようとは思わない、と言った言葉を私は思い出した。 「実際のあなたは絶対、人から嫌われたりだなんてしていないですよ」 自分を悪く評価している。 「欠点なんかじゃない、それがあなたの魅力ですよ」 自分でも突然、何を言っているのかサッパリなんだけど。 思ったままを、口に出していた。
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