2、良い話

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永田さんの手は、私の頬を触っていた。 その手に私は、また自分の手を当てた。 「良いように言われると反応に困るな…」 しばらく、二人とも黙ったまま。 車が道路を走り抜ける音が、車内に響く。 「聞いてもいい?」 「何?」 「名前、何て言うの?」 「知りたい?」 「知りたい」 私はわざと小さな声で、自分の名前を言う。 「えっ?」 小さな声で。 だって、もっと近付きたいから。 永田さんは私の顔に、自分の顔を寄せた。 「トシコ」 「トシコ?」 そう言って、すぐ側で視線を合わした。 うわっ、めっちゃ綺麗な顔。 外からのもれた光が、永田さんの綺麗な顔をうっすらと照らす。 自分から誘うみたいな事をして、私はバカ正直に、また更に赤面して、心臓がバクバクしてしまって、息苦しくなってしまった。 バカだ、私! ヒャー!恥ずかしい! 「どう書くの?」 「びっ、敏感のびっ、びん!」 逃げたい! 今すぐ逃げ出したい! 「へぇ、なるほどねぇ。その名の通りだね」 永田さんは意地悪に私の頬に、親指を立ててなぞる。 ダメ! 身体がビクッとしちゃう。 「目、覚めたね。そろそろ自宅まで送るよ」 あっさり送るよ、と言われて少しガックリした。 キスされちゃうかもって思ったんだけどな。 期待すると、やっぱりダメだね。 「はい」 私は笑顔で答えた。
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