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道案内をして、本当に自宅前まで送ってもらった。
「今日は本当に具合、悪くさせちゃってごめんね。でも、また懲りずに店に来てよ。次は、サイドメニューもご馳走するからさ」
「私はいつも、ご馳走されてばっか」
「不満?」
「全然。でも、ありがとう」
「全然。こちらこそ、ありがとう」
わざとらしく同じ言葉を言うんだから。
面白くねーよ!(笑)
「じゃあ、行くね」
私は助手席の扉を開けると、
「敏子…」
名前を呼ばれてドキッとした。
静かに振り返ると、すっと手が伸びてきて、私の頬に手を添えてきた。
「敏子と今夜は話が出来て、よかった。おやすみ、敏子…」
「うん。おやすみ、永田さん…」
ビックリした。
キスされるかと思ったけど、また違った。
私はただ思ったまま、感じたままを、あなたへと伝えただけだよ。
私は何度も、去って行く彼の車に手を振った。
見えなくなるまで、ずっと手を振り続けた。
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