3、嬉しい話

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すると、永田さんは後片付けをしながら私に言った。 「敏子と話してると楽しいから、いつも敏子が帰った後に思うんだ。もっと話がしたかったなって…」 「本当に?って、実は私もそう」 「…連絡先、知りたいんだけど。ダメかな?」 「ダメな訳ないよ」 私は素直に頷く。 あなたになら聞かれて、教えない訳ないよ。 だって、私はあなたが好きだから。 「教えてくれる前に、先に俺の番号を教えるよ」 そう言って、永田さんは真新しいコースターの裏に書き込んでいた。 うわっ、嬉しいな。 もらっちゃった。 今日は、ラッキーかも。 「その番号にワン切りして」 「今から?」 「もちろん。口約束じゃ意味ないからね」 「うん!」 私はスマホを出して、照れながら永田さんの番号を打ち込む。 「かかった?」 ブーッ…ブーッ…ブーッ… バイブの音。 「きたきた」 永田さんは、ズボンのポッケからスマホを取り出した。 「これね。…敏子、登録完了」 恥ずかしい、お店の中で私の名前を呼び捨て。 「永田さんのも登録完了」 私は液晶を見せると、何度も頷いてくれた。 あれっ、もしかして永田さんも恥ずかしいのかな。 耳が真っ赤になってる。 「敏子、お休みはいつなの?何時ごろなら、電話しても平気?」 「水曜日と土曜日」 「水曜日に連絡してもいい?」 「うん、いいよ」 水曜日に電話して、土曜日にデートってパターンも有りだよねー。(笑) 期待してる。 でも、ここまでするんだから永田さんも私に対しては特別でいて欲しい。 「ねッ。私も聞いてもいい?」 「ん?」 「誰にでも、連絡先を聞いたりしてるの?ほら、例えば自分のお得意さん増やすために」 永田さんは動きが止まった。 そして視線を逸らして、黙ってしまった。 しばらくして、 「そんな、器用に見える?俺って」 あっ…、私なんか変な事、言っちゃたかな。
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