3、嬉しい話

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「ちょっと侵害だな、それ」 「ごっ、ごめんなさい」 調子良く話が展開してたから、ついつい聞いてしまったんだけど。 知りたかったから。 永田さんの本当の心の中が。 「前にも話たけど、基本的に俺は特別、人と一対一では向き合わないし群れるのも、好きじゃない。優しいとか、好かれたいとも思わない。だから、こうやってオーダーの入ったカクテルを、ただただ、ひたすら作ってる」 視線が、何だか凄く痛い。 もしかして、ちょっとだけ怒ってるの? 私は…私はただ…。 みんなに、私と同じ事をしていたら、嫌だなって、不安になっちゃって…。 好きな人からも特別な存在でいたいよなって…。 好きって思われたくて…。 「メニューにもないカクテルを、毎回ノンアルコールで、敏子に差し出すのは、どうしてか。だなんて、何となく意味分かって、お店に来てくれてると思ってんだけど…ショックだね」 あの、わっ、私は…。 敏感のようで、鈍感だから。 察するのに、手間と時間がかかるっていうか。 不確かなものを、確かだと思えないっていうか。 私は永田さんに見つめられて、逆に何も答えられなくなっていた。 私は、余計な事を言ってしまった。 この空気の重みに、少しだけ自業自得をあじわっていた。 今夜の「キスのあじ」は、そんな味がした。 「ごめんなさい」
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