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わたしは、暗くなった校舎に入っていきました。
男の怒鳴り声が聞こえたそれっきり、物音ひとつしません。
古い校舎だったので(果穂さんの知るとおり、今は新校舎が建てられています)、歩くとギシギシと音が立ちます。
犯人に気付かれては堪らないと、
わたしはつま先立ちでゆっくりと歩を進めました。
_______パサッ。
突然、トイレからなにか布らしきものが落ちる音がしました。
びっくりしたわたしはトイレの入口ドアに足をぶつけ、呻いて下を見下ろしました。
_______…え。江美っ…。江美!!
下には、横を向いて目を見開いたまま、江美が倒れていました。
当時江美は可愛らしいワンピース姿でしたが、
それが横脇ほどまでたくし上げられていたのです。
________下着は…。
江美の下着は、すぐそばの水道のところに、荒々しく掛かっていました。
ほとんど、江美が「剥き出し」です。
それにわたしには、
江美のお腹の上にかかった半透明のネバネバの液体がなんなのか、分からなかったのです。
江美がどのような行為をされ死に至ったかを知ったのは、ずいぶん後のことになります。このことは、果穂さんが教えてくれましたよね。
その後すぐにわたしは校舎を出て、家に泣きながら帰りました。
泣き腫らした顔で叫ぶわたしに家族は変な顔をし、
わたしの話を聞くと顔を蒼くさせてわたしを抱き締めました。
_______あんたじゃなくて、良かった。
わたしは今でも、最期の江美の姿を忘れることはできません。
いいえ、忘れてはならないのです。
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