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PM2:00
僕の求めているギターの置いてある店に着いた。
店内には普段壁を覆い尽くす程掛けられている筈のギターが全然なく、壁はほとんど剥き出しになっていた。
店の奥では店主が、僕が求めているあのギターをアンプにも繋げずに無機質な音を奏でていた。
しばらくその演奏を聴いていると、店主が僕に気付いたのか、演奏しながらこちらへ会釈をしてきた。
僕は会釈を返し、彼の弾いているギターを指差して言った。
「それ、いくらですか?」
「百万」
店主は短く返す。
予想通り全然足りないので値下げ交渉に挑戦する事にした。
「三十万しか持ってないです」
「ふん、今日は特別だ、くれてやる」
彼はそう言ってそのギターをケースに入れて僕に渡してきた。
予想を遥かに下回る難易度だった。
でもそれも仕方ないか。
僕はギターケースを左肩に掛け、店を後にした。
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