PM7:00

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PM7:00

 すっかり暗くなった街は驚く程黒く、都会だというのに空には満天の星。  道端に目をやると所々で人が倒れている。  僕はそれに目もくれずに歩き続ける。  どうせ自分には何も出来ないし、何かしたところで何の意味もないから。  そんな事よりお腹が空いた。  と、その時、明かりの点いた店を見つける。  あれは確かテレビでも紹介された事のある有名なラーメン屋さんだ。  いつも行列の絶えないこの店は異様に空いていて、営業しているのか心配になりながらも店内に入るとハチマキを巻いた若い青年が迎えてくれた。  おかしいな、この店は熟年の厳つい男性がラーメンを作っていた筈なのに、今はこの青年が哀しそうな顔で麺を茹でている。  どうしたのか考えていると、出来上がったラーメンを青年が持って来て、少し語り出した。 「麺を茹でたのは素人なので食感は保障出来ませんが、俺の親父が丹精を凝らして作り上げたつゆの味は本物です。  代金は結構なので是非味わって下さい」  そういう事か、全てを理解した僕は無言でラーメンをすすった。  なるほど確かに麺は少し柔らかいが、つゆは本当に旨い。  言葉では表しきれない程に色々な味が混ざり合わさり、この絶妙なハーモニーを作り出していた。 「ごちそうさま、とても美味しかったです」  僕はそう告げ、代金を払わないのは少し申し訳なくなったので、一曲弾く事にした。  ギターの音は店の中でキレイに残響し、店内を包み込んだ。
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