PM8:00

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PM8:00

 店を出て、左腕の時計に目をやるともうこんな時間になっていた。  今日の終わりまで後四時間、彼は休む事なくラーメンを作り続けるのだろう。  こういう時直ぐに感傷に浸ってしまうのは僕の悪い癖だ。  どうせ何の意味もなく、そんな事に時間を割くだけ無駄だというのに。  時計の針はゆっくりと、それでも確実に〇の方角へと向かっている。  それを止めようと思えば止められるけど、結局時は流れ続ける。  ぼんやりとそんなどうでもいい事を考え、また時間を無駄にしたと後悔する。  時計の針はまた少し進んだ。  僕はこれを地面に叩き付けたい衝動に襲われた。  しかしそれをなんとか堪えられているのはこれが大切だからで、大切な人から貰ったからで…。  不意に、あの人に会いたくなった。  馬鹿で自分勝手で五月蝿いけどそれでいて世話焼きで遠回しに優しくて、色々な事を知っているあの人に、大切な人に。  今何処にいるのだろう?そうだ、電話をしよう、そう思い立ち携帯電話を開く。  しかし、画面は真っ暗で、電源ボタンをどれだけ長押ししても光は取り戻せない。  充電は完璧に切れているみたいだ。  僕は悔しくて、それを何処か遠くへと投げ捨てた。  しばらくやり場のない怒りを抱えて、少し冷静になってから考え直す。  そもそも、電源が入ったところで今電話がつながる保障なんてどこにもなかった。  一体あの人は何処にいるのか、もう少し早く思い立っていれば探しにいけただろうに、今更どうしようもない。  僕は諦め、また独りで歩き出した。
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