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夜空の下、発電所は動き続ける。
電車は本数を減らす事なく走り続ける。
高いビルの最寄りの駅でなんとなく降りてみた売れないミュージシャンはベンチに立て掛けられたギターを肩に掛け、自分の一番の自信作を弾き出す。
ラーメン屋は満室御礼、青年は忙しく麺を茹で続ける。
世界に対するデモ行進は破壊と殺戮を止めない。
自衛隊は無秩序に向かってマシンガンをぶっ放す。
それらを見下ろすビルの上で若い男女は抱き合っている。
皆行動は違えど気持ちは同じ。
世界が初めて一つになった時、その中の一つであるあのロックバンドは楽器のチューニングを終え、最期の歌を今まさに歌うところで、ファンの盛り上がりは今日、否、今までで一番だ。
照明は彼らを輝かせ、カメラマンはそれを撮り続ける。
音響の準備も大丈夫、最高の響きを生んでやる。
「ありがとう」
ギターヴォーカルの彼はそれだけ言い、皆と共に歌い出す。
物語のフィナーレはこんなにも明るくて楽しいものであった。
そして彼らの歌が終わる頃、腕時計の三つの針が重なろうとする。
二人の背景では白い光が凄いスピードで膨らんでいった。
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