PM11:00

2/2
前へ
/22ページ
次へ
 夜空の下、発電所は動き続ける。  電車は本数を減らす事なく走り続ける。  高いビルの最寄りの駅でなんとなく降りてみた売れないミュージシャンはベンチに立て掛けられたギターを肩に掛け、自分の一番の自信作を弾き出す。  ラーメン屋は満室御礼、青年は忙しく麺を茹で続ける。  世界に対するデモ行進は破壊と殺戮を止めない。  自衛隊は無秩序に向かってマシンガンをぶっ放す。  それらを見下ろすビルの上で若い男女は抱き合っている。  皆行動は違えど気持ちは同じ。  世界が初めて一つになった時、その中の一つであるあのロックバンドは楽器のチューニングを終え、最期の歌を今まさに歌うところで、ファンの盛り上がりは今日、否、今までで一番だ。  照明は彼らを輝かせ、カメラマンはそれを撮り続ける。  音響の準備も大丈夫、最高の響きを生んでやる。 「ありがとう」  ギターヴォーカルの彼はそれだけ言い、皆と共に歌い出す。  物語のフィナーレはこんなにも明るくて楽しいものであった。  そして彼らの歌が終わる頃、腕時計の三つの針が重なろうとする。  二人の背景では白い光が凄いスピードで膨らんでいった。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加