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蝉の声が
まばらになった
9月の事です
古い僕のアパートに
僕と僕の恋人がいます
今夜
恋人は19回目の
誕生日を迎えます
「プレゼントは
何がいい?」
一昨日
前髪を切りすぎた
僕が聞きます
「なんでもいいの?」
待ってました、とでも
言うように
ベッドの上で足を
ばたつかせながら
恋人が言います
「可能な範囲で」
少しチキンな
僕が答えます
「私、雪が見たい」
僕を神様か魔法使いだと
勘違いしているであろう
恋人が言います
「今夜はちょっと
無理だよ」
いつならいいの?
と、聞かれるのが恐い
チキンな僕が言います
「今夜じゃなくても
いいの」
もう誕生日とか
関係なくなってきた
恋人が笑顔で言います
「分かったよ」
エアコンの設定温度を
最低にして
僕が言います
「何してるの?」
19才まで
1時間を切った
恋人が聞きます
「寒い?」
19才になったばかりの
恋人に聞きます
「寒くないよ」
一緒に毛布にくるまった
僕の恋人が笑います
外では
かすかに蝉の声が
聞こえます
「誕生日プレゼントは
何がいい?」
9月の古いアパート
効きすぎたエアコンの中
毛布にくるまった
恋人が聞きます
「僕も雪が見たい」
1月生まれの
僕が言います
「君と一緒に」
9月生まれの
僕の恋人に言います
「顔が赤いよ」
真っ暗な部屋の中で
僕の恋人が笑いました
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