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「イジメに耐えきれないのなら転校するなり辞めるなりすれば良い、お前の家ならそれだけの余裕も十分あるだろうし、お前の頭なら編入試験も余裕だろう?」
非情とも取れる言葉を残して立ち去る紫苑に、少女はただ小さく“ありがとう”と呟いた。
次の日、少女は学校を休んだ。
そしてその次の日、彼女の転校の知らせとイジメの報告が学校へと入った。
彼はそれを聞いてただ笑う。
「あれで死んでいたなら、また色々と変わっただろうね。」
彼の呟きは誰にも聞こえる事は無かった。
――数年後、紫苑は彼女と再開する事となる。
彼女は彼に“ありがとう、私は今幸せだよ。”と伝えるが、彼女の頭上には2つの時計が時を刻んでいた。
一刻、一刻と時を刻んでいく時計。
それが0時を刻んだ時、彼の目の前で彼女は車に跳ねられた。
人通りの少ない平日の昼間の事だった。
居眠り運転をしていたトラックの信号無視、それに巻き込まれて彼女はあっけなく命を落とした。
彼女の左手の薬指には指輪がされており、彼女のお腹の中には小さな命がいたと言う。
彼は彼女の亡骸を見てからふと思う。
――もし、彼女を引き止めていたなら彼女の時計は消えただろうか。
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