冒頭

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才能、その言葉の意図を考えるに、とても褒められたものではないだろう。 世間一般で、他人の血を見る才能など、無用の長物だ。 「そう気にすることじゃないさ。 生きるもの全てに与えられる才能だ。 お前なら、家畜を絞める様に人を手に掛けられる。」 随分な評価をうけたものだ。 それを聞いて喜ぶのは例え中二病でも稀だろう。 少なくとも俺は喜べない。 「おや、てっきり染まってるかと思ったが、まだまだ常人なのか。 世間は狭い、世界は広いとはよくいったものだ。町に人が… 「これは夢ではないのか?」 「……おいおい、少しは喋らせてくれよ。 話し相手が二人しかいないんだ。人恋し… 「いいから話せ。」 大きく息を吐く音がした。 溜息だろうか。 「夢だよ、紛れもなく。 だがお前の夢じゃない。」 成程、客人とはそういうことか。 しかし、他人の夢に入るなどと、ありえるのだろうか? 全ての人間は無意識下で繋がっているなどというトンデモ理論を何かの本で読んだ気がする。 「そんな理論ぶったものじゃない。 驚天動地並にありえない理由ではあるがね。」 「染まるとは?」 「一言で狂気さ。ここに来るのは血に飢えた殺人鬼や狂人。 どれもお前程の才能は無かったし、中途半端な奴ばかりだったがね。」 「俺もいずれそうなると?」 「さあ、寄様にでも聞くといい。」 「寄様? 誰だ?」 「この夢を見ている御方だ。 会うかい?久々に話ができる方と会えればあの方も……。」 途端に静かになる。 「どうした?」 「お迎えみたいだぜ? 早く起きてやれよ。」 お迎え? 誰かが俺を起こそうとしているのか? まだ話は終わってないんだが。 「心配無用、一度でも来たなら嫌でもまたここに来ることになる。」 …もう二度とこんな夢は見ない方がいいのかもしれない。
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