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「一度でいいんです!お願いします!」
「だーかーらー!俺様はそんなことに興味はねぇんだよォ!!」
俺はあまりの発言に硬直してしまい、完全に口を挟むタイミングを失ってしまったので、自然と傍観することになった。
「だいたい何で魔族が魔物の子を孕もうとするんだよォ!?」
「あら知らないんですか?魔族だって魔物の子を身籠れるんですよ?」
「知らねえよっ!それにどうしてその考えに至ったァ!?」
「うーん、それがですね。どうも私は魔族の中でも保種本能?が強いみたいで....だから強い種の遺伝子を残して行きたいんですよ。だから....ね?」
「ね?じゃねえよ!!」
「いいじゃないですか減るもんじゃあるまいし....むしろいい話だと思いますよ?」
「そういうことじゃなくて....あ!テメェ!ちょうどいい、俺様を助けやがれェ!!」
暫く言い争ってるのを端から見ているとグランドヴォルフが俺に気づいて助けを求めてきた。
「助けるも何も....俺が関与できる話じゃあないだろ?こういうのはお互いが納得するまで話し合うべきだ。」
「そうですよね!お互いがミッッッッッッチリ話し合うべきですよね!?」
「な、うそだろォ....!?」
俺の発言にグランドヴォルフの表情が希望が見えた明るいそれから絶望しかないと悟った暗い顔になった。
「さあグランドヴォルフ様?あちらの誰にも邪魔されない洞窟で話し合いましょう?」
「く、来るなァ!!」
「あら、酷いこと言いますね?まあそんな態度も何ラウンドまで持ちますか....試してみましょう。」
「う、う、うわあああああああああッッ!!!」
すっかり怯えたグランドヴォルフはフェルに背を向け森の奥地目指して全力で駆け抜けて行った。
最後に見たのは、イヌ科独特の尻尾を腹の方に下げる怯えた仕草だった。
「追いかけっこですか?待って下さーい!」
横にいたフェルを見ると既に居なくなっていた。
もしやと思いグランドヴォルフが駆けて行った方向を見ると、音も無く後を追うフェルの姿が遠くにあった。
「....やっと追いついた!」
「先ほどの女性はだれですか?」
追いついたユーナ達を見て、安堵したのか俺はこの言葉をつぶやいた。
「....恋する乙女。」
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