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その時は唐突に来た。
パンッ! という人体が弾けるような音がして、そいつから血飛沫が飛び散った。幸い急所は外れており、傷口を手で押さえながらそいつは物陰に飛び去った。
「イザー!!!!」
あたしが駆け寄ろうとすると、そいつは再びあたしに銃口を向けて後ずさった。
「来るな。君は、来るな!」
そいつが初めてあたしに怒鳴った。
あたしがどんなに怒っても、我儘言っても、癇癪起こしても、いつも笑っていたそいつが初めてあたしを恫喝した。
あたしは震えてそれ以上動けなかった。
背後では、味方の狙撃銃がそいつを未だ狙っているのが感じられた。
「…マリア、僕は君を愛してる。
その気持ちに嘘はない」
優しい声音に戻ったそいつは、威嚇するようにあたしの後方に向かって銃を一発鳴らすと、機敏な動きで走り出した。
あたしは、弱弱しく腕を持ち上げ、力いっぱいその背中に引き金を引いた。
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