16人が本棚に入れています
本棚に追加
ボスは夕刻帰宅した。
部下から何を聞いたか知らないけど、それからのボスは夕食も定例会議も風呂に入る頃になってもどこかぼーっとして何かを考えているようだった。そんなに悩むようなことならあたしに話しちまえばいいのに。何をいまさら遠慮してんだ。
「マリア、今日は一緒に風呂入ろう」
世話役に風呂に呼ばれるまでも物思いに耽っていたボスは、突然思いついたようにあたしの腕をとって歩き出した。あたしは話が聞きたかったし、ボスが話す気になってくれたってんなら丁度いいやって了承の意を示してついてった。
さっと互いの身体を洗って、湯船に向かい合わせで浸かったところで、ボスはようやく重い口を開いた。
「…俺は、自信がない」
その第一声に、あたしは眉間にしわを寄せた。何言ってんだか分かんねえ。
お前はロッソ プローヴァを束ねる人望厚いボスやってるじゃねーか。そう言いかけて、また開いたボスの唇に、あたしはその言葉を飲み込んだ。
最初のコメントを投稿しよう!