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「マリアが、この先もずっと俺のそばにいてくれるのか…。
俺は、前のボスの時も、あの男の時も、マリアの心の弱っているところに付け込むような真似をして、俺のそばに引き留めようとしてきた」
「…………ボス」
「でも、マリアにとってはそれでよかったのか…。
お前の心は今どこにある、誰の元にある?」
「……………」
「俺にはそれに、自信が持てない。
勿論、マリアの組織への忠誠を疑ってるわけじゃない。
この2年、本部に半ば幽閉するように閉じ込めたのに、嫌味ひとつ言わず俺と共に組織の発展に貢献してきてくれた。それには本当に感謝してる」
「だが、忠義と愛情は別物だ。
俺は…もっと早くにマリアを解放するべきだったのかもしれない。
2年間、お前を抱くたびに思ったよ…。
この組織の呪縛から解放してやりたい…でも、手離したくない!」
ボスの言葉は力強く、悲痛に溢れていた。
あたしは、続くボスの言葉を黙って待った。
「…先日、隣町を仕切るタルテッサ・ファミリーが世代交代したらしい」
濡れた髪の隙間から、ボスがあたしをちらりと見た。隣町のファミリーとはつまり、あの男の所属した組織だ。
「へえ…隠してたのはそのことか」
あたしはひとつ浅く呼吸して、努めて何でもないような声色を装った。
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