本部屋敷への帰還

8/11
前へ
/50ページ
次へ
その日から数日後。 「タルテッサ・ファミリーから、会食の申し込みが来たって本当っすか!??」 玄関ホールに響き渡った声は、つい最近本部屋敷配属になった新人の組員のものだった。 「あ…馬鹿、ここでその名前を口に出すな!」 他の組員の制止も空しく、あたしとボスは丁度そこを通りがかっていた。 ボスの眉間には、あからさまに不機嫌な皺が刻まれる。 「ボス、今日もお疲れさんですっ」 何も知らないその組員は元気よく挨拶したけど、ボスはその存在にも気付かないフリをして横を無言で通り去った。あたしはその半歩後ろを歩きながら、不安な表情を浮かべるその組員に「お疲れさん」と声をかけてやった。 ボスが角を曲がると、後ろで強い拳骨が振り下ろされる音がした。大方、若い組員が隣にいた組員に叱られたんだろう。
/50ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加