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それからそいつは数か月にわたってあたしの町に滞在すると教えてくれた。
市街地近くのアパートメントの1室を借りて生活し始めた。
あたしは、仕事がすむとはそそくさと準備してそいつの部屋に入り浸るのが日課になっていた。
もうほとんど毎日そいつの家から出勤し、そいつの家に帰っていた。
あたしの私物もずいぶん増えたからだろう。そいつはあたし専用のクローゼット家具を買って部屋においてくれた。
そいつの生活は意外に羽振りもよく、昼間なんの仕事をしているか知らなかったが経済的には豊かだった。
時々有名レストランに連れて行ってくれることもあったし、ウインドウショッピングで適当に服を見繕って買ってくれることもあった。
とにかくそいつといると飽きなかったし、楽しかった。
マフィアの仲間たちはそんな風になったあたしに「お前が男のところにいそいそ通う日が来るなんてよ」とか、「お前を落とせる男のテクは相当なんだろうな」とか下種なことをいっていたけど、なんと言われようとあたしは気にならなかった。
ある時あたしは、いつも世話になっている礼にと、そいつのために銀のチェーンで出来たチョーカーを贈ってやった。
着けた様を見れば、首輪に見えなくもない。
あたしのモノだっていう印みたいなもんだ。
襟付きのシャツの隙間からキラリと光るそれを見るたび、あたしは嬉しくなってそいつの首に抱きついて、珍しく自分からキスをした。
最初にそれを着けてから、そいつは一度もそのチョーカーを首から外さなかった。
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