八鐘牡丹

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「おいおい……道の真ん中で何呑気に突っ立ってんだよ。 こちとら行きたくもない就任式に行かなきゃダメなんだからさぁ。 いや、寝坊した私が悪いんだけどさ」 頭を掻きながら、寝癖たっぷりの彼女は理不尽極まりない事を述べた。 ここは、ほぼ未開の地と言っても過言じゃない場所。 そこで、天文学的な確率で事故を起こした彼女は、何も悪びれる事なく呟く。 「あー、じゃあ私もう行くから。 今度は気をつけろよ」 「待てやゴラァァ!!」 振り返り、馬車に戻ろうとした彼女を呼び止める。 目を向けると、頭から血を流してフラフラとさながらゾンビのように数メートル先で立っている鈴蘭の姿があった。 まじか、死んだと思ったわ。 相変わらず頑丈な奴だ。 「てめえ…………人を跳ねといて、何被害者気取ってんだゴラ。 女をいたぶる趣味はねぇが………たった今、例外が出来たぞゴラァァ!!」 声と共に、鈴蘭から視認出来るほどの衝撃破が巻き起こり、氷の馬車に直撃した。 氷の馬車は氷塊を撒き散らしながら、バラバラに砕け散りまるで雹のように辺りに降り注ぐ。
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