不良少女

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◆◇柏木航介◇◆ 麗らかなる春の朝。 昨日の雨はウソのようで、空には淡い青が広がっている。 俺はアパートの外の鉄柵に寄りかかって煙草を吹かした。 寝起きの頭で昨夜の出来事を思い出してみる。 「俺は、仕事帰り、路地で、女の子を………拾った?」 ……今のは余りにも簡略化し過ぎた。 昨夜、俺は仕事帰りにいつも通っている路地で傘も差さずに、ただ天を仰いでいる女の子を見つけた。 今にも闇に呑み込まれそうで、今にも消えてしまいそうな、儚げで危うい女の子を。 彼女は小さく呟いた。 『……死んだ方がまだマシだ』 その言葉と一緒に本当に彼女が消えてしまいそうな気がして、俺は声をかけずにはいられなかった。 彼女は寒さからか寂しさからか小さく震えていた。 泣いていたのか雨だったのかは分からない。 彼女は微かに哀しげに微笑んだようだった。そして、眠るように意識を失ったのだ。
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