えぷためろん

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不思議の絵本 「これは不思議の絵本なんだよ」 と、彼が言うもんだから、 「まあステキ。魔法がかけられているのかしら」 と返した。 すると彼は 「魔法の絵本のどこが不思議なんだい?」 と、まじめな顔で言い、一呼吸おいて、 「魔法がかけられているんだろう?だとしたらなにが起こっても不思議じゃない。魔法の絵本は不思議じゃないんだよ」 と、続けた。 「でも、魔法自体が不思議なものだから、魔法の絵本は不思議な絵本でいいじゃない」 と、わたしが反論してみると、 「それは、君が魔法をみたことがないからだよ。魔法の国の住人にしてみれば、魔法はあたりまえのことで、やっぱり不思議じゃないんだよ」 と、わたしの意見に自分の意見を被せてきた。 すこし面倒くさいなあと思いつつも、ここで付き合ってやらないとあとでまたなにかとめんどうだと思ったわたしは、しかし納得するのも面白くないので、やはり反論で返すことにした。 「あなたは魔法の国の住人ではないわ。よくもまあわかったような口ぶりでそんなこと言えるわね」 即座に彼が返す。 「だって僕は魔法の世界に行ってきたもの。この本はそこで手にいれたものさ」 なにを言っているんだろうと思いつつも、クールに彼に問いかけた。 「むこうの世界はどうだったの?」 「とても言葉にはできない。でも、やっぱり僕たちの世界とは違って、すべてが魔法によるものだった。魔法のベッド、魔法の絨毯、魔法の家に、魔法の音楽、魔法の食べ物、魔法の……」 「すべてのものが魔法だったってことね」 彼の言葉を途中で遮って、わたしはニヤリと笑う。 「じゃああなたのいう魔法の国から持ってきたそれは魔法の絵本で、不思議な絵本ということになるじゃない」 これは反論できまいと言ったわたしの言葉を、彼はひょうひょうと否定して、 「これは不思議の絵本さ」 と、繰り返した。 さすがにいらっときたわたしは、彼のもつ絵本をむんずと奪い、なかを見ると、 そこには、ロケットやら宇宙やら、車やらものの仕組みやら、元素記号みたいなものやらが、子どもむけの絵本みたいになって紹介されていた。 「ね、魔法の世界で手にいれた、不思議の絵本さ」
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